新書「渡来系移住民」にも根拠のない古代史解説がある

新書「渡来系移住民」にも根拠のない古代史解説がある(古代史の虚像と書籍)
前回、「日本紀」(2018 百田尚樹)は、不十分な内容もあるが、俗説とは異なり評価できる部分もあることを紹介しました。しかし、その後に発刊された古代史関係新書を見ると、「日本国紀」の内容は完璧に無視されていることが分かりました。
今回は、その事例として、新書「渡来系移住民」(半島・大陸との往来)(2020 吉村武彦、吉川真司、 川尻秋生)(上記写真参照)にも、たいへん立派な書籍にもかかわらず、同じく「日本紀」を無視し、かつ根拠の無い内容のあることについて、検討します。
まず、その「日本紀」を無視した問題の部分ですが、5世紀の中国の「宋書」に記載されている「倭の五王」の扱いです。
「日本紀」では「倭の五王」はヤマトの天皇ではないことを書いていますが、完全に無視されています。すなわち、、本著「渡来系移住民」は「倭の五王」はヤマトの天皇であることを前提に解説しています。
その説明として、最後の倭の五王「武」について、武=ワカタケル(雄略天皇)と読み、物的根拠もなく雄略天皇として決めつけている点です。
この強引な決めつけに、「日本紀」では、倭の五王については日本書紀には書いて無い内容であること、名前の読み方は「こじつけ」になっていること、などを指摘していて、「倭の五王」はヤマトの王でないと思われる、としています。
また、拙ブログでも「倭の五王と奈良・大阪のツングース系王家は別と判断される」とし、「倭の五王」は北九州倭国の大王として指摘してきました。
「日本紀」の内容を真面目に検討すると、古代日本には北九州倭国とヤマト朝廷の二つの国があったことになり、万世一系の否定、さらには、多くの歴史解説書(俗説)の否定につながることは言うまでもありません。
このためでしょうか、この新著「渡来系移住民」でも、「日本紀」を無視した内容になっています。
関連し、日本古代史では、本著のように、物的根拠が無くとも平気で解説している例が多くあります。そして、正されることはないという、たいへん憂いある状況が続いています。
拙ブログでは、「日本の古代史は戦前と変わっていない」ことを指摘してきましたが、それは21世紀の令和になっても改善されず、いかんともしがたい焦燥感に包まれ、絶望的な状況が続いていることになります。
しかし、虚像は必ずや壊れること確信し、拙ブログは虚像批判を続けます。

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