日本人の起源は中国大陸の古モンゴロイドではない

日本人の起源は中国大陸の古モンゴロイドではない(古代史の虚像と書籍)
大判ビジュアル図解「大迫力!写真と絵でわかる日本史」(2013年 橋場日月)という一般向け書籍が出ていますが、事実と異なるいくつかの問題点のあることを前回紹介しました。
関連し、今回は、その書の指摘する「日本人の起源は中国大陸の古モンゴロイド」(上図参照)について、その問題点について検討します。
まず、日本人のDNAですが、最近のY染色体ハプログループ分類によれば、アイヌ系が35%、マレー系が30%、中国系が20%、モンゴル系が5%、その他10%となっています。このうち中国系とモンゴル系の混血と言われる朝鮮半島由来のツングース系は25%(中国系+モンゴル系)と推察されます。詳しくは「最近のY染色体DNA情報と従来知見の修正」を参照願います。
そして、新モンゴロイドの定義ですが、Wikipediaによれば次のとおりです。
「新モンゴロイド(しんモンゴロイド、英: neo-Mongoloid)とは、W・W・ハウエルズによるモンゴロイドの分類。日本では埴原和郎や尾本恵市らが用いている[1]。モンゴロイドを形質的特徴を中心とする遺伝的特性から、「新」・「旧」という、定かではない単語を用いて分別した表現方法である。進化の程度が「新」・「古」という意味ではなく、寒冷地適応を経ているか否かの違いを表したというのが、世間に出回っている現段階における分類である。」(引用終了)
以上の新モンゴロイドの定義に従いますと、本書にあります「日本人の祖先は大陸の古モンゴロイド」の古モンゴロイドは、アイヌ系とマレー系がこれに当たります。
しかし、アイヌ系は中国大陸で先住民族としてまったく確認されて居ません。すなわち、可能性としては中国大陸を通過しただけであり、本書の分類は根拠がありません。
どちらかと言うと、アイヌ系は、アフリカを出た後、インドを経て、インドネシアにあった言われるスンダランドに着き、そこから沖縄を経て日本に来た可能性があります。詳しくは「アイヌ系民族のルーツはアフリカ」を参照願います。
次に、南方系のマレー系ですが、彼らは稲作を持ち込んだ民族と想定され、日本に30%も居ますが、寒冷地適応を経ていませんので彼らも古モンゴロイドに属します。彼らは中国大陸がルーツではなく、インドネシア当たり(もとスンダランド)がルーツであることが分かっています。
一方、新モンゴロイドですが、朝鮮半島由来のツングース系がこれに当たります。縄文時代に渡ってきたとありますが、拙ブログでもそのことは指摘しています。詳しくは「縄文時代から高身長の人は居た」を参照願います。
しかし、多くのツングース系は2300年前頃、鉄器をもって日本に来て、鉄器をベースに弥生時代を作った主要グループと推察されます。
そしてツングース系は25%になりましたが、全体として中国大陸由来はこのツングース系だけの25%であり、多数派ではありません。
また、本書の図(上トップ図)では、新モンゴロイドは北方の樺太を経て日本に渡ってきたように描かれていますが、北海道にツングース系は先住民族として確認されていませんので、このことは事実と異なります。
拙ブログでは、新モンゴロイドと言われるツングース系のほとんどは朝鮮半島を経て日本に渡り、日本海を北上し、日本各地に広がったと観ています。詳しくは「ツングース系民族はいつ日本へ来たのか」を参照願います。
まとめますと、「日本人の起源は中国大陸の古モンゴロイド」という本書の内容は、最近のDNA情報を基にすれば、古モンゴロイドに属する人々は35%のアイヌ系と30%のマレー系ですが、彼らは中国大陸がルーツではありません。本書の内容は明らかに間違っています。
また、新モンゴロイドや古モンゴロイドという区分は、最近のY染色体ハプログループ分類を基にすれば、ほとんど意味のない古い分類であり、使わない方が誤解を生まないと思われます。

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