日本人の「完成」は古墳時代で正しいか愚考
2 Comments
レインボー

日本人の「完成」は古墳時代で正しいか愚考(古代史の虚像と書籍)
拙ブログでは、アイヌ系継体王(在位:507-531年)が朝鮮半島由来ツングース系王朝を6世紀初頭に滅ぼした結果、日本語はアイヌ系言語が原語となり、同じく日本の宗教・哲学もアイヌ系原始宗教(多神教)が中心となり、育まれ発展してきたことを検討してきました。
一方、昨年(2021年9月18日)ですが、Yahooニュースとして朝日新聞DIGITAL「<日本人の「完成」は古墳時代だった?DNAを分析、ルーツに新説」が掲載されていました。(すでに本記事は削除されています。)
今回は、この記事の妥当性と記事を作った朝日新聞の古代史報道姿勢について愚考します。
まず、その内容(一部)を引用しますと、次のとおりです。
金沢市で見つかった約1500年前の古墳時代の人骨のDNA解析から、縄文人や弥生人にはなく、現代日本人に見られる東アジア人特有の遺伝的な特徴が見つかった。日本人のルーツは、土着の縄文人と大陸から渡来した弥生人の混血説が有力だが、さらに大陸からの渡来が進んだ古墳時代になって古墳人が登場したことで、現代につながる祖先集団が初めて誕生したことを示唆している。
【解説図】現代日本人の成り立ち
金沢大や鳥取大などの国際研究チームが18日、米科学誌サイエンス・アドバンシズに発表する。
日本人の起源は、列島に住み着いていた縄文人に、大陸からの渡来集団が混血して弥生人となり、現代の日本人につながったとする「二重構造モデル」が定説とされてきた。1991年に東大名誉教授だった埴原和郎氏が唱えた。
研究チームは、約9千年前の縄文人や約1500年前の古墳人など計12体のDNAを解読。すでに解読済みの弥生人2体のデータなどと比較した。親から子に遺伝情報が受け継がれる際に生じるわずかな違いの痕跡から、どの集団が遺伝的に近いのかを調べた。
その結果、弥生人は、中国東北部の遼河流域など北東アジアで多く見られる遺伝的な特徴を持ち、縄文人と混血していることも確認できた。一方、古墳人は、弥生人が持っていない東アジア人に多く見られる特徴を持っていた。さらに、現代日本人と遺伝的な特徴がほぼ一致することも判明した。
■大陸からの移住、新技術持って次々に?
大陸からの渡来人の大規模な移住は、約3千年前の弥生時代にさかのぼる。研究チームは、それ以降も漢民族などの集団が次々に渡来し、織物や土木などの新技術を伝えて古墳時代を築き、現代の日本人につながっていったとみている。
古墳時代は3世紀後半~7世紀にかけて続き、弥生時代末ごろには邪馬台国が栄えたとされる。
今回分析できた古墳人の骨は、金沢市で発掘された3体にとどまる。新説を裏付けるには、さらに分析数を増やす必要があるという。
研究チームの金沢大古代文明・文化資源学研究センターの覚張(がくはり)隆史助教(考古科学)は「日本人が縄文、弥生、古墳の三つの祖先集団からなることを示す初めての証拠だ。今後、ほかの古墳人や弥生人のゲノムを広く調べることで、日本人の起源の謎に迫っていきたい」と話している。
論文は以下のサイト(https://doi.org/10.1126/sciadv.abh2419)から読むことができる。(石倉徹也)
■古墳時代とは――大和政権が支配し、各地に前方後円墳
縄文、弥生に続く3世紀後半~7世紀までの時代。農耕技術の発展や武器の普及などにより権力や富みが集中して階級社会が生まれ、大和地方を中心とする大和政権が成立。指導者たちを葬った巨大な前方後円墳が各地に造られ、武具や鏡などが副葬された。邪馬台国の女王「卑弥呼」の墓との説もある箸墓(はしはか)古墳(奈良県桜井市)や、世界文化遺産の大山古墳(伝仁徳天皇陵、堺市)も有名だ。 朝日新聞社(引用終了)
引用が長くなりましたが、この報告の問題点は、論文内容と新聞報道姿勢の2点です。
まず、論文内容ですが、引用記事にもあるとおり「今回分析できた古墳人の骨は、金沢市で発掘された3体にとどまる。新説を裏付けるには、さらに分析数を増やす必要があるという。」です。
これら3体の調査からでは、引用冒頭にある、「金沢市で見つかった約1500年前の古墳時代の人骨のDNA解析から、縄文人や弥生人にはなく、現代日本人に見られる東アジア人特有の遺伝的な特徴が見つかった」という理解(結論)に至るには無理があります。
また、DNA解析とありますが、Y染色体ハプログループは不明です。Y染色体ハプログループが分かれば、そのもとになった民族が分類できますが、それが無いのでは、上記結論からは、さらに遠くなります。
そして、さらに問題なのは、従来知見の無視です。
基になった論文内容を詳しく検討しますと、「日本人のルーツは土着の縄文人と大陸から渡来した弥生人の混血説が有力」とありますが、大陸から渡来した弥生人は朝鮮半島由来の北東アジア系のツングース系だけしか紹介されていません。ツングース系とは満州で発生した中国人とモンゴル人の混血民族で、朝鮮半島の主要民族です。
しかし、3000年前に北九州に水田稲作を導入した南方系の稲作民族(マレー系)も弥生人になりますが、この記事では無視されています。
拙ブログで何度も指摘していることですが、日本人は、三大民族のアイヌ系が35%、アジア南部由来稲作民族マレー系が30%、朝鮮半島由来ツングース系が25%、合計90%とその他10%です。これら三大民族が弥生時代から居たことは知られていることです。しかし、三大民族のマレー系の存在を本論文では無視しています。
日本の古代史研究には、自分の理屈に合わないことについて無視して発表する場合が見受けられます。上記報告も、都合の悪いことは無視するという同様な手法がとられています。一般の学会ではあり得ないことで「日本の古代史は戦前と変わっていない問題」がここにもあります。
次に新聞報道姿勢問題ですが、ここにも「日本の古代史は戦前と変わっていない問題」があります。
記事最後に、「邪馬台国の女王「卑弥呼」の墓との説もある箸墓(はしはか)古墳(奈良県桜井市)」という記述があります。しかし、この記述には大きな問題があります。拙ブログだけでなく、多くの研究者は、箸墓古墳=「卑弥呼」墓説を否定しております。この説は99.9%あり得ません。書く必要のないことです。
例えば、刺青等の風俗や容貌から、倭人は中国南部の海南島の人々に似ていることが魏志倭人伝に書いてあります。このことは、邪馬台国は南方系の人びとの国であり、そこに住んでいる人々は稲作民族と言われるマレー系の人々であったことを示唆しています。
しかし、箸墓古墳=「卑弥呼」墓説を支持している学者は、この南方系の風俗について無視しており、説明しようとしません。すなわち、都合の悪いことは無視するということで、説(学問)と言えるものでありません。
このような99.9%あり得ない記事(箸墓古墳=「卑弥呼」墓説)を載せるということは、記者が無知かウソと分かっていて書いている確信犯以外にあり得ません。良識の朝日新聞が、このようなウソ(説?)を平気で書くこと、おそらく書き続けていることに、焦燥感と無力感を禁じ得ません。
日本の古代史は「戦前と変わっていない」ことを拙ブログも指摘していますが、それには、このようにウソを平気で載せる報道機関の責任もあります。詳しくは「誤りと偽りの考古学・纏向」を参照願います。
まとめますと、日本人というのは民族の単位ですが、その基本的内容は日本語を使用する人であり、現日本語の誕生はいつだったのかまで含めて検討が必要と思われます。
一方、本報告のようにDNAだけで見るなら、日本人には、水田稲作を導入したマレー系、鉄器を導入したツングース系、縄文時代からいたアイヌ系等の人々が居ますが、これら日本人のDNAは弥生時代にすべてがそろっていたことが分かっていて、日本人のDNAは弥生時代にほぼ揃っていたと結論されます。
すなわち、上記「朝日新聞記事」には、科学的根拠は無く、独断と偏見で書かれた記事と結論されます。
関連し、日本人のルーツについて、上トップ図にしめしました。本図は拙ブログの過去記事「各民族はいつ頃日本に来たのか」からの再掲です。

日本史ランキング