天皇家のルーツと書籍の欺瞞

天皇家のルーツと書籍の欺瞞(古代史の虚像と書籍)
前回、天皇家のルーツはアイヌ系であることが2016年頃はほぼ明らかになったこと、これは、日本の古代史を研究する上でとても重要なこと、しかし、そのことについては2016年以降の新刊書にも書いてないことを検討しました。
こうした真実が報道されない問題、これには日本史における根深い問題、すなわち、「日本の古代史は戦前と変わっていない問題」があります。関連し、今回は、さらに検討します。
なお「日本の古代史は戦前と変わっていない問題」については「日本の古代史は戦前と変っていない」を参照願います。
まず、小生が調査した令和元年(2018年)以降の現天皇家のルーツについての書籍情報は上表のとおりです。これは市図書館にある古代史関係図書の17点について検討したものです。新刊書のすべてではありませんが、「山本博文」や「佐藤信」という「東大教授」の著作もあり、歴史関係の主な図書は含まれていると思われます。
そこで、現天皇家のルーツの記述ですが、次のとおりです。
まず、2018年~2019年年発刊の5点ですが、天皇家のルーツについて、「天皇の歴史」(2018年)では鉄器と稲作を持ち込んだ弥生人(朝鮮半島由来人)、「日本の誕生」(2019年)と「神武天皇「以前」」(2019年)では「神武天皇」となっています。これらは従来の情報の繰り返しで、DNA情報を知らなかった可能性は否定できません。
また、「日本国紀」(2018年)と「天皇(125代)の歴史」(2018年)では継体天皇(在位:507-531年)になっています。しかし、継体天皇がアイヌ系であることについては言及していません。これらも従来知見の繰り返しになります。
次に2020年~2022年の発刊です。全部で12点ありますが、天皇家のルーツについては、いずれも言及無しです。
特に、これらのなかには「東大教授がおしえる日本史をつかむ図鑑」(山本博文 2020年)、「テーマで学ぶ日本古代史 政治・外交編」(佐藤 信 2020年)がありますが、著者二人とも高名な東大教授だった人たちです。天皇家のDNAについて東大教授が知らない訳はなく、故意に無視している状況と思われます。
これらのことは何を意味するのでしょう。天皇家のルーツについては分かっているが、天皇家のルーツについては、2年前(2020年)からは言及しないということが出版関係の了解になっているのでしょうか。たいへんな欺瞞です。まさに、古代史は戦前と変わっていないことを示唆しています。
まとめますと、天皇家のルーツについて、近刊書では、2018年~2019年は従来の知見の繰り返し、しかし、2020年以降は言及していないという状況になります。
これは、古代史に限りますが、21世紀になっても重要な知見(天皇家はアイヌ系)を伝えようとしない姿勢が感じられます。なんという欺瞞でしょう。いかんともしがたい焦燥感を禁じえません。

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